年の便りに想いを馳せて
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「……あれ？」 例年よりも数枚ほど多い自分宛ての年賀状に、健二は「はて？」と首を傾げた。 インターネットや携帯が普及したため、だんだんと廃れかけている年の便りを手にしてリビングへと向かう。数枚程度ならば健二も親しい友人などに出しているが、かつてこんな多くの枚数が来たことはない。ダイニングの椅子に座って改めて年賀状を見返し――その差出人の苗字に合点がいくと同時に驚いた。 『陣内』 墨で書かれたものから、印字されているもの。果てには子供の字で書かれたそれらに、健二は驚きで目を丸くする。まさか、彼らから年賀状が届くとは思っていなかった。 慌てて表面にひっくり返せば、実の個性豊かな文面の数々が葉書を彩っている。 万里子は流麗な墨で、万助からは豪快な字で「今年も上田に遊びにきてちょうだいね」「新潟に来い、美味いイカをくわせてやる」。万作からも「またおいで」との言葉。 頼彦、邦彦、克彦一家からは写真入りで子供たちからのメッセージも。 太助からの年賀状には翔太からの「また来させてやってもいいぜ」とどこかひねくれた一言も添えられていた。直美に理香、理一からも来ている。 理一からの年賀状には、しっかりとした字で「進路先に迷ったら是非頼って欲しいな。君の特技を生かせる場所を紹介するよ」と書かれていた。文章から理一の茶目っ気たっぷりの笑みを思い出して健二は苦笑する。 自衛隊なんて入れるわけがないというのに、ことあるごとに誘ってくる理一の熱心さには脱帽するしかない。そして、良く見ればなんとアメリカにいるはずの侘助からも年賀状は来ていた。 素っ気無い簡素な葉書。しかし隅に書かれた「そのうち会いに行く」の文字。 ろくに話も出来ずに侘助と別れてしまったことを残念に思っていた健二は、その文章に笑みを浮かべる。これがただの社交辞令だろうということを解っていても嬉しかった。 年賀状は夏希からも来ていた。 「今年は受験で忙しくなるかもしれないけど、遊びに行こうね！」元気いっぱいな字で書かれたそれを読み終わって、健二は年賀状の束を抱きしめる。 「……返事、書かなきゃ」 コンビニならばまだ葉書は売っているだろうか。急いで書いて、今日中に出せば三が日、もしくは四日には届くはずだ。 ばたばたと出かける準備をしていた健二は、ふと廊下にまだ葉書が落ちていたことに気がつき拾う。二枚あるそれは一枚は聖美から、そしてもう一枚は――ーー。 「……佳主馬くん？」 『必ず会いに行くから、待ってて』 明けましておめでとう、の下に書かれたその文章に健二は目をぱちぱちと瞬かせる。 「うーんと……遊びに来る、ってことかな」 ああ、それならいつ来るのか聞かなきゃ。折角だから僕の家に泊まればいいだろうし、あ、佳主馬くんが来たらどこ行こうかな。 そんなことをつらつら考えつつ、葉書をテーブルに纏めて健二は家を出る。買ってきたら何を書いて出そう、と楽しげに考えながらコンビニまでの距離を歩き出す。 ――その日、篠原家に届いた名古屋からの年賀状と称する挑戦状に、青筋を浮かべた夏希が佐久間と共に小磯家を急襲するまであと一時間。 「健二くんは私のお婿さんになるのに！ 今度会ったら、決闘叩きつけてやろうじゃないの……！！」 「ああああの先輩……っ！？」 「あははー、モテモテだなぁ健二。頑張れよ！」 「え、ええええええ！？」 あなたに追いつくまで、待っていて |