――――思い出すのは、優しい声ばかりだ。


　彼は間違いを犯した。拭い去れない罪を背負った。嘘をつき続けた。ナナリーに。スザクにも。ルルーシュはスザクを信頼してなどいなかったのだ。二人の間にあった何かが音をたてて瓦解していく。壊れたものは、二度と元には戻らない。
　止めなくてはならない。間違いは正さなくては。ルルーシュを止められるのは、その間違いを正せるのはスザクだけだ。スザクだけが、それをすることができる。
　七年前のあの夏、「俺」が生かした君を「僕」が殺すのだ。

『スザク！』

　もうあの優しい声はきこえない。


　目も眩むような憎しみのなか、彼の瞳の中に見つけた暗闇に気付いて手を伸ばした。触れ合う寸前にその思いは引き裂かれて、新たなる悲劇を生み出した。
　現世とは異なる空間で願いが一瞬重なり合ったとき、お互いに伸ばされた手はしっかりと繋がれた。何度も何度もすれ違って、あと少しのところで届かなかった手がやっと届いたのだ。

　そして僕は最悪で最愛の親友を彼から下賜された剣で刺し貫いた。
　死にたがりだった自分が生きて、明日を望んだ彼が死ぬ。
　それが僕らの業だった。


＊＊＊＊＊


　渇望するのは、失った親友の声。
　求めることすら罪だと解っていても、求めずにはいられない。
　そんな時。


『スザク？』

　繋がるはずのない電話に、彼が出た。



『どうしたスザク、そんな』
　――――幽霊でも見たような声を出して。
　くすりと、小さな笑いが聞こえた。


「だってこの案件の纏め方……まるでお兄様のようなんですもの。私にそれを羨む資格なんて、ないでしょうけれど……」


『……たとえば、この世に初恋というものがあるとするなら』


「私を誰だと思っている？　――私はＣ．Ｃ．だぞ。これぐらいは朝飯前だ」


「ねぇスザクさん。私、スザクさんのこと大好きですけど……でもそれと同じくらい大嫌いだったんです。知ってましたか？」


　焦がれて、欲しがって。ずいぶん回り道をしたけど、やっと君に辿り付ける。



「僕は、君を友達だと思っていなかった」

　この声が、君に聞こえますように。




“Ｃａｌｌｉｎｇ”




　ずっと伝えたかったことがあるんだ。



■ツッコミどころは多数ありますが、今までのオフ本で一番スザルルっぽくないのが致命傷……。(笑)スザ→ルル要素はある意味一番濃いですが。^^