「…………え」
「“え”って何だよ“え”って。……そんなにおかしいかよ俺が渡したら」
「いや、その……」
「あーもうっ! 俺だって恥ずかしいんだよっ! 四の五の言わずさっさと受け取りやがれっ!!」

 エドが真っ赤な顔で、少し不恰好なラッピングの袋を勢い良く投げ付ける。それを受けとめて、ロイは未だ呆然とした顔でソレをじっと見つめた。
「…………」
「…………ロイ?」
 あんまり呆けているのにエドの眉間に皺が寄る。二人きりだからか敢えて先生と呼ばずに名前で呼んだのにも言葉を返さず、ロイは顔を手で覆った。それに更に?マークを頭に浮かべ、エドはロイに近づく。
「…………」
「おい、どうしたんだよ?」
「…………てね」
「は?」
「……まさか、貰えるとは思っていなくてね」
 君はいつも貰うほうだと言って憚らないし、実際そうだろうと思っていたから期待してなかったんだ。
 そう言うロイの言葉に少し驚いて、エドはロイをまじまじと見つめる。そういえば彼の手の隙間から見える顔は……僅かに赤い。
「……照れてんの?」
「嬉しいんだよ」
 二人のいる科学準備室には茜色の光が差し込んできている。
 赤く、橙色に世界が染まる。けれど、ロイの顔色はそれだけのせいでもなさそうで。
「……三倍返しだからな」
「もちろん。君の為なら三倍と言わず何でも買ってあげるよ」
 口調はいつものものに戻っているが彼の顔は下げられたままだ。常は人の目を見て話す彼がそうしているのが何だかくすぐったくて。
 こんな姿が見れるのなら、案外チョコ作りも悪くないかもしれないとエドは思う。一緒に作った歩達に感謝だ。

「……いい加減、俺を見てモノを話せよ」

 いつもとは逆の対場がおかしくて嬉しくて。  にっと悪戯っぽい笑みを浮かべて、エドは珍しくロイの首に抱きついたのであった。









「……ちなみに今日は家に来るんだろう?」
「うんにゃ。用があるから行かねー」
「え、用?」
「あぁ。キラ先輩に収集かけられてんだよ。何か『歩に一ヵ月早いホワイトデー計画!』とか言って……」
「…………何だねそれは」
「さぁ。まぁでも歩に何かしてあげようってことなんだからいいけどさ」
「……エドワード(涙)」
「じゃ、俺行くなー」