つまり、始まらなくてはならないのだろう。物語も、運命の歯車も、また。









 私立、浪漫(ロウマン)英娯学園――テキトーに訳してロマエゴ学園は珍妙な名前(無理やりすぎる)であるにも関わらず、都内では人気のかなり高い学校である。生徒の自主性を重んじ、育てる。つまりそれほど校則はキツくなく、また授業も単位制を一部に導入して選択できる授業も豊富であり、校内はまるで大学のように掃除は業者が行い、カフェテリアなどの施設も備えているため倍率は毎年増える一方だ。
 授業料も他に比べると安く、特待生はほぼタダというシステムはどこから生み出されるのかがかなり謎ではあるのだが、設立した理事長すらも謎の人物であるためあまりその辺りは気にされていない。
 とにもかくにも、普通の学園とは一味も二味も違う学園であることはご理解頂けたであろう。
 更に小学部、中学部、高等部、大学部と四つに分かれている学園内ではそれぞれに『生徒会』が存在する。
やっていることは他の学校とそう変わらないのではあるが、この生徒会には一つだけ他の学校――いや、世界でも類を見ないほどの特色があるのを、大衆には未だに知られていない。
 そう、歴代の生徒会長、または生徒会役員達が秘密裏に行っているあることを。
 そして、生徒会という括りだけではなくこの学園には種別を問わず『異能』を持った人間が集められていることなど――――世間様には知られなくていいことなのである。




「おはようございます、エド先輩! アレン先輩!」
「おはよーゴザイマス……」
「ん? おお、おはよう昌浩、リョーマ」
「おはようございます。珍しいですね、朝に二人に会うの」
「今日は俺もリョーマも朝練が無かったんで。先輩達もですか?」
「ああ。アレンも生徒会の仕事が無いっていうから一緒に」
「良かったらご一緒しませんか?」
「わぁ! ありがとうございます!」

 駅から学園までの道には生徒達が溢れていた。その中で衆人からこっそりと注目を集めていた二人組に近寄った少女達に周りがほのぼとした空気を覚え和む。
 先輩と呼ばれた少女達は中学部二年、エドワードエルリック嬢とアレン・ウォーカー嬢である。
 中学部入学当初からとても仲が良くいつも一緒にいる二人を、その容姿から『金のエドワード・銀のアレン』と校内ではセットにして呼んでいる。また、エドワードは身体能力が高く全国の競技大会で高成績を納め、対してアレンは首席で入学、以来学年ではいつもトップをとり生徒会では副会長をこなしていた。
 エドワードは乱暴ながらも気さくで打ち解けやすい性格から、アレンは丁寧な物腰と誰にでも優しく接する態度が人気を呼び、共にそのルックスからも中学部ではちょっとしたアイドル的存在である。
 また、前述した通りこの学園は『異能』を持った人間が集められる学園で、二人もその括りに入れられている。エドワードは錬金術の才能がこの年でほぼトップクラスであり、アレンはイノセンスという物質に選ばれたエクソシストの資質を持っていた。


「ふああ……」
「リョーマ、寝不足ですか?」
「まぁ、そんなところっス……」
「また夜中までゲームでもやってたんだろ」
「いや、昨日は親父に付き合わされて外で打ってたから……」
「一体何時までやって……ふぁ」
「昌浩も寝不足?」
「はい……。その、オシゴトがらみで」
「ああ。体には気をつけろよー?」
「大丈夫です。昨日はじい様がいなくて、急ぎの件だったからですし」

 彼女らに声をかけてきたのは中学部一年の安倍昌浩嬢、越前リョーマ嬢である。
 眠そうに欠伸をしているリョーマは日本人らしい黒髪の猫のような瞳が印象的な結構な美少女。同じく黒髪を長く伸ばし、首の辺りで一つに括る昌浩も綺麗といった印象のリョーマとは違うが、まだ少し幼い雰囲気を漂わせた可愛らしい少女だ。
 一見それ以外取り立てて特筆すべきことは無さそうな少女達ではあるが、リョーマは米国のジュニアテニス大会を過去四連覇で優勝した中学テニス界の期待の星で、昌浩もまた弓道を幼い頃から嗜み幾度も優勝を飾った腕前を持つ。
 また昌浩は公に明かされてはいないものの、政界などの裏社会では有名な陰陽師「安倍晴明」の孫で後継者であり、強い霊能力を宿していた。そのため祖父からの仕事を任されることも多く、それを一部の人間は知っている。そしてリョーマもまたこの世ならぬものが見える『見鬼』の才を持ち、平安の時代に存在したとある姫君の異能の才を継承していた。


「……あれ?」
「……お?」
「あれって歩先輩かな?」
「そうみたいっスけど」

 暫く学校までの道のりを時間があることもあってのんびりと歩いていると、前方に見えた光景に四人は目を瞬かせた。
 衆目の目を気にしながらも、少女に緊張した様子で何かを言っている少年は制服が違うから他校の生徒だろう。対するは四人も良く知る少女で、その必死さに少々困惑している様子である。
 やがて少女が軽く頭を下げると、少年はその場を残念そうに去っていった。一連の光景を見て、ぼそりとリョーマが呟く。

「……相変わらずモテるね、歩先輩」
「今日は男の子でしたけど、この前は女の子に呼び止められてましたしね」
「良くチャレンジするよなー」
「でも歩先輩って綺麗でカッコイイですから、その気持ち解らなくもないですよ」
「だよねー。ホント歩ってば美人さんでさり気無く優しいからオチちゃうのに、本人解ってないし」
「…………」
「…………」
「……あれ?」
「キラ先輩っ!?」
「おはよー皆v気づくのが遅いよ」
「び、びっくりした……」

 四人だったはずの会話に突然加わった声に四人はぎょっとする。後ろから入ってきたのは高等部一年のキラ・ヤマト嬢だった。亜麻色の髪に紫の瞳の彼女は、どこか大人しそうに見える容姿とは裏腹にアクティブな性格をしている。
 中学二年に転入してきた当初はあまり目立たず、むしろ暗く無表情でまるで人形のようなイメージだった。しかし、徐々に頭角を現した彼女は射撃部で優秀な成績を納め更にプログラミングの世界大会での優勝経験をもつなど、今では国内どころか世界にすら名を知られる存在となっていた。彼女もまた『異能者』であるが、その多くは今は伏せておこう。

「歩ーおっはよう!」
「おはようキラ。それにお前達も一緒だったのか」
「おはよ歩」
「おはようございます、歩先輩」
「っス」
「おはようございます!」
「おはよう」
「見てたぜー? 告白か?」
「ああ、他校のヤツらしい。全く奇特な」
「先輩……そこまで言わなくても」
「俺なんかに告白してくるヤツがまともなはずがない」
「断言したし……」
「本当のことだろう。現に俺に言ってくるヤツにまともなのがいるか?」
「………………」×3
「ひよのちゃんとか火澄がマトモだとはちょっと言えないよね……」
「でも先輩」
「何だリョーマ」
「あの人はいいんスか?」
「あの人?」
「先輩のこと好きな人、でしょ? そしたら別に恋愛感情抜きであの人だって、ここにいるメンバーだってたぶん先輩のこと好きっスよ?」
「…………」
「…………なぁリョーマ」
「何スかエド先輩」
「それ、遠まわしに自分も歩が好きですー! って言ってること気づいてるか?」
「…………あ」
「……ありがとな、リョーマ」
「別に……」

 少し照れているらしいリョーマの頭を撫でて、鳴海歩嬢は微笑んだ。
 中学部三年の彼女は生徒会に所属しその会長を務めている。去年から副会長として生徒会に所属している彼女はあらゆる意味で注目の的であった。彼女もキラと同じく『異能者』であるが、それはまた後日。
 世界的なピアニストであった鳴海清隆を兄に持ち、自身もピアノに優れCDも何枚か出している彼女にはもともとファンは多い。それでいて一年のころに入部した剣道部でもなかなかの好成績を出し、『クールビューティー』と呼ばれているものの面倒見のいい性格から男女(主に女の方が)ともに憧れを抱く人間は多数存在している。
 そして、感情の起伏が少なくあまりその怜悧な印象を崩さない彼女であるが、ただ一人だけそれを変える人物がいた。

「あ、新一先輩!」
「!!」
「ん? おー、おはよう。何だ、アイドル勢ぞろいって感じの面子じゃねぇか」
「たまたまなんですけどね」
「あ、そういえばさっき歩先輩が告白されてたんですよー」
「そうなのか? モテるなぁ、歩」
「し、新一さんに比べればこんなのミリ単位どころかナノ単位です!」
「へ? いや、俺なんかは別に……」
「いえ! 新一さんは男女どころか老若男女にモテモテです!!」
「あー……その、ありがとな。照れっけど」
「い、いえ!」
「…………ほーんと、歩って新一さん好きだよねぇ……」
「初めて見た時ビビッたぜ俺……」

 曲がり角から現れたのは、もはや美女と呼んでも差し支えない容姿の高等部三年、工藤新一嬢であった。
 元女優の母親譲りの顔は愛らしいというイメージの母とは違い、どこかシャープで整った硬質な印象を与える。もうそろそろ成人という年ということもあり、少女というよりは女性と呼ぶほうが相応しい彼女もまた、この学園の憧れを集める少女だ。中学生からその思考能力・推理力で数々の難事件を解決し、名探偵と呼ばれる彼女のファンはそれこそ老若男女、世界にまで及ぶ。
 鳴海歩嬢とは幼馴染で幼少の頃からの付き合いがあり、そのため自身の兄に懐かぬ代わりとばかりに歩が唯一無条件で信頼し、べったりというほど懐いていた。
 彼女は本当はこの学園の生徒ではないものの、昨年から始まった『他校交流学生制度』で年に二ヶ月や三ヶ月を本来の帝丹高校ではなくこちらで過ごしている。滞在を自由に選べるこの制度をフル活用し、彼女はこの制度で事件で抜けた単位を賄っているに等しい。

 以上がこの学園のアイドル的存在である七名であり――――この物語の主人公達である。
 ぶっちゃけた話人数多すぎだとか世界観どうなってんだだとか(何せ現代設定寄りのくせに錬金術はあるわエクソシストもいるわ陰陽師はいるわ他のファンタジー設定はあるわ)色々ツッコミどころは多いだろう。
 更に言えばもう一人(某マフィア関係)出てきそうな雰囲気も漂っており、一体何ジャンル合同にする気だと呆れられても仕方が無い。
 だがそんな読者(いるのかが甚だ疑問であるが)の疑問もよそに、物語は進む。恐らく。

「おはようリョーマくんっv」
「うわっ!?」
「おー、おはよう不二」
「おはようございます、不二くん」
「おはようエドワード、アレン」
「……不二先輩、朝っぱらからくっついてこないでください」
「いーやーv」
「不二……せめて学校でしろ」
「何か言った? 手塚」
「………………いや」
「ちょっ、助けてよ国にぃ!」
「すまんリョーマ。俺には無理だ」

 現れたのは中学部二年の不二周助、手塚国光である。
 共にテニス部に所属している彼らのことは……ほぼ原作沿いで手塚とリョーマが幼馴染であることぐらいしか違いはないので割愛。ただし、幼馴染はもう一名存在する。

「朝から“私の”リョーマちゃんに何をやってるんですか? 不二先輩」
「ああ、おはよう小姑改め竜崎さん。“僕の”リョーマくんに抱きついてるんだけど」
「そうですか。じゃあ即刻その手を離して今すぐこの場から消えさってください。リョーマちゃんが汚れます」
「ははははは。何言ってるのかなこの小娘は」
「ふふふふふ。いいからどきやがれって言ってるんですよこの変態魔人」

 後ろに龍と虎を背負いバチバチと火花を飛ばし始めた二人とその渦中のリョーマ、取り残された手塚から六人は距離を置く。面倒ごとからは離れるのが吉である。

「いやー何時見ても凄いよねぇ……」
「凄いで終わらせていいのかアレを」
「だって歩、もっと凄いのいーっぱいいるじゃない?」
「…………まぁな」

 にこにこしながら言うキラに溜息をつきつつ、歩はふと前を見やり「あ」と声を漏らした。
 その目線を不思議そうに辿りキラはぱっと顔を輝かせると、たっと駆け出し直ぐに前を行く数名に声をかけた。

「フレイ! リナリー、それにシンと火澄君も!あ、ウィンリィちゃんもおはよう!」
「あ、おはようございますキラ先輩、歩先輩、新一先輩! エド、アレンくん達もおはよう」
「よーっす」
「おはようございますウィンリィ」
「っス」
「おはようございます先輩方」
「おはよう」
「キラ! おはよう、今日は早いのね」
「カガリもカナードも早かったからついでにね。二人は先行っちゃったけど」
「あ、おはようアレン君!」
「おはようございますリナリー。それからアスカ先輩とミズシロ先輩もおはようございます」
「おはよーさんアレン。歩もはよ」
「おはよう火澄、シン。リナリーとフレイも」
「おはよう、歩」

「人口密度が一気に増えたな……」
「あはははは……」
「これ、セリフの前に名前でも書かないと解らないんじゃないか?」
「でもそうなると、結構面倒ですよね……」

 と、いうわけでまとめて説明しよう。
 ウィンリィ・ロックベルはエドやアレンと同じ中学部二年生。フレイ・アルスター、シン・アスカ、ミズシロ火澄は歩と同じ中学部三年生である。
 さすがに増えた面々に台詞が多くなってしまうのはご理解頂きたい。誰がどれを喋っているのかは……フィーリングで。何となく解っていただけたら幸いだ。

 何となく手持ち無沙汰になってしまった新一と昌浩は顔を見合わせて苦笑する。だが諸君、考えて欲しい。友人達は出てきたものの、まだ重要な人物が残っていることを。

「キ――ラァァ――ッッ!!」
「あ、何か聞こえてきた」
「あ―ゆ―む――っっ!!」
「空耳だろう」
「「ンなわけあるかっ!!」」

 息ぴったりでどどどどど……という効果音をつけて現れたのは高等部一年アスラン・ザラと浅月香介両名である。
 ぜーはーとどこから走ってきたのか、きれている息を整えると各々の相手に近寄った。

「キラ! 今日は一緒に行かないかと聞いたじゃないか! どうして勝手に先に行くんだ!」
「えーと何となく?」
「歩! 俺もザラと同じこと聞いただろ!?」
「忘れた」

 さらっと返された彼女からのツレナイお言葉に、二人ともががっくりと肩を落とす。しかし気を取り直して隣を歩こうとしたっところで後ろから飛来した何かに後頭部を強打し、すっ転ぶ。その隙をつくようにして、キラと歩の傍に二人の少女が男子二人を踏みつけ割り込んだ。

「おはようございますキラ、歩」
「おはようございます鳴海さん! キラさん!」
「おはようラクス、ひよのちゃん」
「おはよう、二人とも」
「あ、ラクス先輩ひよの先輩! おはようございます!」
「おはよう」
「まぁ、昌浩さんに新一先輩まで。おはようございます」
「おはようございますお二人方! 特に新一さんはかーなりお久しぶりですね」
「このところ立て込んでたからな……」
「ラクス……俺とキラの邪魔です。どいてください」
「あらあら随分としたご挨拶ですこと。どくのは貴方のほうでしょう?」
「じょ、嬢ちゃん……そこ、どいてくれると……」
「あら浅月さん。おはようございます、いたんですか? 気づきませんでした。これから私と鳴海さんは一緒に仲良く新一さんと昌浩さんも含めて登校するので邪魔をしないでくださいね?」
「………………………………はい」
「浅月弱いな……」
「マヌケメガネですから」

 火花を散らすラクスとアスラン、そして項垂れる浅月を見やり新一は少し同情したように呟いた。それにさらりとひよのが返し更に浅月が凹んだように暗雲を背負う。マヌケというよりヘタレのほうが正しいのではないだろうか。とにもかくにも学園を統べるとも言われる女帝と女王の降臨である。未だかってこの二人に簡単に勝てたものは居ない。ロマエゴ学園の影の支配者といっても過言ではないだろう。っていうか勝てないって。
 そんな中、昌浩はふと背後から駆けてくる足音に気づき振り向く。するとそこにいた幼馴染兼親友と友人の姿に顔を綻ばせた。

「彰子! それにアル君もおはよう!」
「おはよう昌浩、先輩方もおはようございます」
「おはよう、安倍さん。おはようございます、先輩方」
「ああ、おはよう彰子。アルフォンス」
「おはようございます、彰子さん。アルフォンスくん」
「おはようございます! エドさんならあちらですよ?」
「まぁ、今日は虫はいないみたいなので大丈夫です」
「……虫……」
「全く、教師のくせに姉さんに手を出すなんてどうかしてますよねあの無能v」
「……無能……」
「新一さん、大丈夫ですか? ここの毒気に当てられないように先に行った方が……」
「いや、まぁ、大丈夫だろう多分……」

 花のように無垢な笑みを浮かべつつ、背負うオーラは真っ黒い中学部一年藤原彰子とアルフォンス・エルリックに新一は乾いた笑いを漏らした。あまり気づいていないらしい昌浩が少々羨ましい。そしてこの空気に順応してきている自分もちょっとアレだ。
 歩の心配そうな顔に苦笑して、新一はふと近付いている気配にくすりと笑みを浮かべた。

「こっちも来たようだしな」
「え?」
「新一おはよー!v」

 どこから現れたのか後ろからがばり! と効果音をつけて新一に抱きついた男に歩はむ、と眉を潜める。明らかに敵意のこもった視線を向けられながらも気にせずに抱きついた人間、高等部三年黒羽快斗は新一へとますます擦り寄った。

「直接行くなら迎えに行ったのにさー、メールくるの遅いよー」
「悪い。もう近くまで来て思い出したからな」
「まぁいいよ。でも、二日ぶりの新一ーv」
「メールはしてただろうーが……」
「でもでも! やっぱり生身が一番だもん! あー新一だぁ〜……v」

 後ろから抱え込むように新一を抱きしめるその表情は締まりなく崩れている。どこか似通ったような顔を持ちながらも、性別とその身に纏った雰囲気の違いのせいか最近では少し似ているぐらいで片付けられる。ちなみにもちろんのことながら血は繋がっておらず、恐らくこの話上一番のバカップルである。

「朝からお熱いことで……」
「エド、羨ましいんですか?」
「はっ!? ンなわけないだろ!」
「そうですか?」
「……からかうなよアレン」
「ふふ、すみません」

 なちゅらるにイチャつく快斗と新一、そして快斗を睨む歩を横目にエドはアレンを軽く睨んだ。その頬がうっすらと赤いのを知りながら、アレンは微笑むだけに止める。そろそろ学校も近い。それならば、自分と彼女の想い人には直ぐに会えるだろうから。
 と、その前に前から歩いてくる険悪そうな雰囲気を漂わせた二人組を見つけ、アレンは手を振った。

「あ、敏次! 比古君おはよう!」
「! あ、アレン。おはよう」
「おはようございます……」
「あ、比古。坊城せんぱ……」
「おはよう安倍!!」
「おはよう昌浩!!」
「お、おはようございます……」

 まるで詰め寄るように近付いてきた中学部二年、坊城敏次と一年珂神比古に昌浩はぱちぱちと目を瞬かせた。険悪そうな雰囲気でお互いを牽制するように前に立った二人の前に彰子がすっ、と姿を現すと途端にびしりと二人は固まる。
 彰子は固まった二人を気にした様子も無く、天使もかくやというほどの微笑みを浮かべた。愛らしいその表情に、しかし二人は背後に修羅を見る。ああ、お父さんお父さん、魔王よりも怖いのがいるよ。

「おはようございます、坊城先輩。比古」
「おおおおおはよう、藤原くん……」
「ああああ、彰子おはよう……」
「それじゃあ私と昌浩は仲良く先輩方と一緒に行くから、また後で」
「………………」
「あ、ああ、後で…………」

 さらっと昌浩をもっていかれた二人はがっくりと後方を歩き始める。その姿に幾人かが苦笑して同情とエールを送った。見ていれば二人が昌浩に恋しているであろうことは実に解りやすい。気づかぬのは本人のみである。
 そんなこんなで門をくぐれば、丁度駐車場に車を止めて職員玄関へと向かう人影を二つ見つけた。それを見て昌浩が少し微笑み、エドが目線を逸らすようにしながらもちらちらと盗み見た。そうしているとエドの携帯が受信を告げて。
『おはよう、今日も可愛いよ。また後で。』

 そんなメールを読んでエドは眉を寄せながらも赤くなり、赤くなるエドを見てアレンはくすくすと微笑み、歩いていく科学教師のロイ・マスタングと歴史教師の安倍蓮――真の名を紅蓮という――を見送った。
 昇降口につくとここまで共に歩いてきた面々ともここでバラバラになる。その前にぐるりと見渡せば見覚えのある人影がちらほらと見えた。

「あ、カガリーカナードー!」
「おお、キラ。何だか今日は勢ぞろいだな!」
「どうしたんだこの状態は……」

 キラは近くを歩いていた姉である高等部一年カガリ・ユラ・アスハと兄である高等部二年カナード・パルスを見つけて近寄る。そして、アレンはその傍にいるラビと自らが会いたかった人物を見つけて、嬉しそうに微笑んだ。

「おはようございます、神田」
「……おはよう」


 高等部二年ラビの苦笑を背に受けつつ、同じく高等部二年の神田ユウは近寄ってくる最愛の少女の姿に滅多に見せない薄い微笑を見せたのであった。











“めくるめく異世界へようこそ! どうかごゆっくりおたのしみくださいませ!”
“しかし生憎ながら、上記のお話はすでに 終わったあとのお話 でございますけれど!”












「……ってかさー、僕たち出番なし?」
「諦めろカノン……」
「えー!! 香介君が出てるんだよー!? くやしーじゃない!」
「全くだ。私の歩にべたべたと……!」
「理緒、落ち着きな。清隆、そもそもアンタは妹に嫌われてるだろう」
「大変だな、高町……」
「俺も出ていないぞ! 出せー!!」
「……アンタも大変だね、エロスマン」
「エルスマンだっ!!」
「ああリナリー……お兄ちゃんも出たかったよ……!!」
「……収拾つかないわね、これ……大体黒羽君が出ているんだから私も出すべきでしょう?」
「そうね……私も、大佐……いえ、無能を止めなくてはいけないだろうし」

 すいません皆さん、またの機会によろしくお願いします……。


「ってか僕とつn」
 あああああちょっと待って待って!! まだ解らないから! どうなるか解んないから!!
「でももう俺拍手で出ちゃってるじゃん」
「そうだよね、なら僕たちが出たって……」
 これ以上収拾つかなくなるようなことはやめてくださいお願いします!!
「ふーん……仕方ないな、頑張りなよ?」
 …………はい…………。



 強制終了。