※ギアスR2、25話捏造です。最強カップルが武力介入(あながち間違いでもない)しまくっております。何時ものごとく捏造万歳!!状態です。 ルルーシュ生存ルートを模索してみた。そしたらとんでもなくぶっ壊れた。(爆) 読後の苦情はご遠慮願います。途方もなくギャグです。名探偵と妹と魔女が最強。 それではUターンorスクロールでどうぞ! 「お前達は恐らく、アイツの魂に引きよせられたんだ」 魔女は確かな確信をこめてそう言った。 「ギアスは、王の力は人を孤独にする。しかしギアスは人の願いだと、アイツは言った。ならばそうなのかもしれない。だからそう考えることの出来るアイツは思ったよりも不幸ではないんだろう。幸せなんだろう。……お前達が探すパンドラとやら……願いを叶える赤い宝石とやらは恐らく、ギアスが作り出した副産物じゃないかと私は思う」 思わぬ言葉に息を呑んだ二人へ魔女は薄く笑みを浮かべて見せた。 「赤い血のような宝石。不老不死になれるとまで言われているのだから、関連が無いとは言い切れないだろう? 私個人としては、それはギアス保持者の目なのではないかと思う。そういう事例はあるからな。死後、遺体から摘出されたギアス保持者の目玉が赤く硬質化していたというのは」 「お前達の世界とこの世界は、繋がっていないわけではない。どこかでどんな形であれ、繋がっている場所はあるはずだ。だから目がそちらの世界へ何らかの事象でそちらに行ったり、又はお前達の世界の何処かにギアス保持者がいるという可能性も捨て切れない。世界というのは一つではないからな。いや、そもそも世界という定義自体が無意味なのかもしれないが」 「何にせよ、アイツが死ぬことでこの世界にお前達を繋ぎとめていた鎖が消えるならば、きっとお前達は元の世界に戻れるはずだ。……大丈夫だ。そんな顔をするな。アイツも私も、あの騎士も。もう納得して受け入れたんだ」 そんなことを言われても簡単に納得出来るわけがなかった。 ずっと傍で見てきたのだ。彼の苦悩も非道も、優しさも願いも祈りも全て。その結末がこれだなんて、悲しすぎる。 二人は彼らの『本当』を知っている。 世界で一番優しい嘘つき。 世界を愛した優しすぎる魔王様。 真の平和を望む魔王が英雄に討たれて、それで世界は平和になる――――他の選択肢は、何か無いのだろうか。 魔王と魔女と騎士の最大の誤算。 それは彼ら二人がこの世界に来たことではなく、彼ら二人の信条を掴みきれなかったこと、だったのかもしれない。 「スト――――ップッッ!!!!」 「っ!?」 「な……っ!」 死を覚悟して微笑んだ。 せめてスザクが苦しまないように。もう、未練はないのだと教えるように。 そして剣がルルーシュの胸を突き刺すはずだった。 威勢のいい声が頭上から降ってきたと思ったら、真っ白いものに捕まっていた。眼下にゼロの仮面が見える。逞しい腕に抱き寄せられたことに、ルルーシュは混乱した。 「……は? え? え?」 「すみません、ルルーシュ。やはり私達には無理です」 黙って見てることなんて出来ない。 聞こえてきた見知った声にルルーシュは目を丸くした。ついで自分を背にかばう男の姿を見る。 白いマント、白いシルクハット、白いタキシード。 青いシャツに赤いネクタイ、そして左目にはモノクルがついている。 白に埋め尽くされた顔の見えない男。それはまるでゼロとは対称的な出で立ちだった。 そしてそのゼロ――――スザクはその白尽くめの男を見てぽかんと固まっていた。群衆すらも唖然とした顔をしている。 それもそのはずだ。常人離れした、悪逆皇帝ルルーシュのド派手なパレードに、明らかに人外の動きをするゼロが乱入してきたかと思えば、今度は白尽くめの男が何故か上から降ってきた。 上は空なのにどっから来たんだコイツ。誰もの頭に浮かぶ考えをルルーシュは彼を知っていたために放棄した。すなわち、考えても無駄。 「ば、馬鹿! 何をしているんだそこをどけ!」 「申し訳ありませんがそれは出来ませんね」 「っ! お前は俺の計画を……!」 「木っ端微塵、灰塵に帰すつもりですが何か?」 「大問題だ!」 ここでルルーシュがゼロに討たれればゼロレクイエムは完遂されるというのに! 邪魔としか言いようがない白尽くめ――――快斗の行動にルルーシュは舌打ちをした。仮面を被るスザクを見やり、いいからやれと口パクで伝える。だがスザクがそのつもりになっても、快斗を押し退けるのは難しかった。 この世界では誰も知らないが、快斗は平成のルパンと呼ばれる怪盗キッドであり、稀代のマジシャン黒羽快斗である。 身のこなしは一級品。マジックの腕も一級品。空中で狙撃されても軽傷で済むわ、飛行中の飛行機から腕を怪我しているにも関わらず飛び降りて飛び回るは、本来両手で構えるはずのマシンガンを平気な顔で片手で撃つわと、彼もスザクに負けず劣らずの人外である。 更にそこにルルーシュにも劣らないIQ400を誇る頭脳が合わさり、彼が本気を出せば――――スザクが並大抵に勝てる相手ではなかった。 「快斗……?」 呆然としたようにカレンが呟いた。カレンは前に新一に聞いたことがあった。快斗は白い服を着て戦っているのだと。 ならば、あれは。 神楽耶や扇なども困惑と驚きの表情を浮かべていた。ゼロはルルーシュ。しかしゼロが現れた。そして今また新たな人物が。 ぴん、とスザクと快斗の間で緊張が走る。何かがきっかけになれば斬り合うことになるのだろう。見たところ快斗に武器を持っている様子は無かったが油断は出来ない。スザクは快斗のマジックを見ていたからだ。無から有を生み出す奇跡のような、魔法を。 群衆すらも固唾を飲んで見つめるしかないその状況を――――突然、凛とした声音の大音声が遮った。 『Ladies and Gentleman !』 「なっ!?」 「なにっ!?」 「来ましたね」 驚くルルーシュとスザクや群衆らを余所に快斗がニヤリと笑みを浮かべる。突然その場に影が差し掛かりほぼ全員が頭上を見る。そこにはブリタニアの戦艦、軽アヴァロンがギリギリまで降下していた。 アヴァロンの下には大型のスクリーンが下がっていて、その傍にはナイトメアフレーム。見覚えのある機体にルルーシュは眉を寄せる。 「ジョーカー……!?」 『悪いな、ゼロ。ルルーシュをみすみす死なせるわけにはいかねぇんだ』 聞こえてくるのは聞きなれた新一の声だった。ルルーシュは嫌な予感を感じてどうにか止めようと通信機を取り出す。スザクがルルーシュさえ殺せば全ては丸く収まるのだ、それなのに! 『まずは黒の騎士団、及びアッシュフォード学園生徒! っつーかカレン! リヴァル! それからナナリー! お前達に聞く! ――――ルルーシュは嘘つきか?』 突然名前を呼ばれてカレンはぎょっとした。群集の一人であったリヴァルもだ。ナナリーは呆然としていた瞳にナイトメアフレームを映すと、きゅっと唇を引き結び叫んだ。 「嘘つきです! お兄様は……最低の、嘘つきです!」 「……嘘つきよ。人を騙すのが一番得意」 「……嘘つき、だと思う! 上手すぎて最後まで解らないくらいの……」 名指しされたリヴァルもわけがわからないままに声を張り上げた。ルルーシュは嘘つきだ。呼吸するように嘘をつく。演技も上手い。だから見破るのなんてそう簡単には出来ない。 各々がそう告げれば新一は機体の中で満足そうに笑みを浮かべた。 『そうだ。ルルーシュは嘘つきだ。たくさんの嘘をついて、人を騙して。酷いやつだ』 「そうです。お兄様は、酷いうそつき……」 そこまで口にして、ナナリーはハッと目を見開いた。 嘘つき。 ルルーシュは嘘をつく。たくさん嘘をつく。 “白い飾り窓があって……” ――何処からが、嘘だ? ナナリーはルルーシュの愛を信じていた。けれどもルルーシュはそれを愛ではないと言った。だが、そこに、その言葉にこそ愛があれば? その言葉こそが愛の証であり――――ルルーシュが嘘つきだとするならば。 もし、兄がフレイヤの鍵を持っていた自分と同じことを考えていたとしたならば。 兄は、ルルーシュは。 「――――まさか、お兄様っ!! お兄様は、ダモクレスの代わりになるつもりで……!」 「勘違いをするな! 俺はこの世界を……!」 「嘘です!」 ゼロは兄だと聞いた。しかしゼロはそこにいる。 スザクが死んだ。ゼロはルルーシュを討とうとしている。ここにいる者以外で彼をすんなり討てるのは、一人しかいない。それが意味するものは恐らく。 兄とスザクならば、出来ないことはないとナナリーは今でも信じている。だからこそ、その答えに瞬時に辿りついた。 「お兄様は嘘つきです! だから、お兄様が言うことを私は信じません! あなたは――――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは世界の悪意をその身に集めて、自分が死ぬことで世界を作り替えようとしている! 最後まで世界に嘘をつき、世界に殉じようとしているんです!」 凛とした清廉な声が響いた。その声は確信ではない。断定だ。 揺らぐことない強固な意思をもった声。 その声につき動かされるようにリヴァルが叫んだ。 「っ、そうだ! ルルーシュ! 俺はお前が優しいの知ってるぞ! 冷たく見せててでもどっか抜けてて、本当はすっごく優しいルルーシュ・ランペルージを知ってる!」 「っ、カイト! シンイチ!」 「言ったでしょう? ルルーシュ」 『俺達は――――お前の味方だけど、お前に従う義務はない。この舞台はルルーシュのシナリオだ! ルルーシュはゼロに討たれることで、悪として死んでいくつもりなんだ。帝国ブリタニアを内部から破壊し、戦争の咎を背負い、全ての罪を自分に集めて死んでいこうとしているんだ!』 群衆が、磔にされた者達がざわめき始める。 ルルーシュ皇帝は、本当は優しい? 世界に嘘をつく? まさか、彼は。 「ルルーシュ……」 ナナリーと新一、リヴァルの声によって皆がルルーシュを僅かながらに疑い始める。カレンは既に確信した顔になり必死になって枷を外そうとしていた。 「ルルーシュ! アンタやっぱサイテーね! おかしいと思ったのよ、君は生きろだなんて言ったアンタがこんなことやらかすなんて! つーかナナリーの話してたお兄ちゃんっぷり考えてたら無理に決まってたわね!」 「ルルーシュ……!」 スザクが仮面の中で焦った声を出した。ゼロレクイエム――ルルーシュの計画が崩れていく。イレギュラーの手によって! 「お前たち……!」 「諦めてください、ルルーシュ。貴方の計画は名探偵がぶち壊します」 ギリギリと歯を食い縛り睨み付けるルルーシュに、にっこりとキッドが笑みを浮かべる。 「あの人のモットーは、罪を犯した犯罪者に自殺をさせないことなんです。生きて罪を償えと、彼は言いいます」 『更にこんなものがある!』 不意にアヴァロンから下がっていたスクリーンがぶれる。何のためなのだろうと思っていたが漸く使われるらしい。巨大なスクリーンに何かが写し出され、そこに映ったものに――――場が静まり返った。 「………………え」 「あれって……」 「もしかして……」 「ルルーシュ皇帝……?」 フリルのついた紫色のドレス。ふわりと広がった裾から上に向かえば艷めかしい細さの腰。 腰よりも長い黒髪は白い肌に陰を落とす。恥じらうように軽く伏せられた瞼と朱に染まる頬、唇の紅は蠱惑的で。 そこにいるのは傾国といっても差し支えないほどの美女で――――何処からどう見ても、そこにいるルルーシュ皇帝だった。 「なっ、なっ、な……っ!」 口をパクパクとさせてルルーシュは呆然とそれを見上げた。ナナリーは瞳を輝かせてうっとりとスクリーンを見詰めている。ああ、やっぱり私のお兄様は美人さん。磔にされている面々(カレン以外)は唖然としていた。何だこの絶世の美女。天子に至っては余りの美人さにはしゃいでいる。 「見て星刻!ルルーシュ様すっごく綺麗!」 「そう、です、ね……」 最初は呆然としていた群衆も衝撃が覚めると思わず口々にその美しさを褒め称えた。 「綺麗……!」 「男、だよな……」 「美少女……」 「俺男でもいい……」 『更に更に!!』 新一の声と共に画面が切り替わる。そこに写し出されたのは真白いウェディングドレスを身にまとったルルーシュ。群衆が更に沸く。 『こんなのも〜』 切り替わって写し出されたのは先程の紫のドレスを脱ぎかけているルルーシュだった。顔を真っ赤にして涙目だ。潤んだ紫の瞳が扇情的である。それを見ていた男性達がばたばたと前屈みになった。ついでにゼロも膝をついた。肩がプルプルと震えている。あ、何か堪えてる。 『こんなのもどうだ!』 眩しく輝く白磁の肌。惜しげもなく形のいい太股が万人の目に晒される。肩にかけられたパーカー越しにでも、線の細さや華奢な腕が解りそれはまるで彫刻のよう。 「あ、水着祭りの時の」 一瞬静まり返ったその場にリヴァルの声がぽつりと響いた。 そして沸き上がる、黄色い悲鳴。 「羨ましい!」 「綺麗すぎるわ!」 「何処で買えるこの写真!」 「携帯どこいった!?」 「写メ撮んなきゃ!」 その間も次々と写真は切り替わる。 幼少の頃、今は亡きマリアンヌ后妃とユーフェミア、それにコーネリアとナナリー、ルルーシュの五人で映っているもの。子供の頃のスザクとルルーシュが仲良く昼寝をしているところ。学園内でのイベント時の写真から普段の生活。主婦のようなことをしている時のビデオ(明らかに隠し撮り)からべったべたにナナリーを甘やかしている様子まであるはあるは洪水のようにそれらがスクリーンへと現れた。 「……………………」 「……………………」 「………………ルルーシュ」 「………………何だスザク」 「どうする? 続ける?」 「…………死にたい」 というか羞恥で死ねる。 もはや止めることも出来ずに、ルルーシュはその場にぺたりと体育座りで座り込むとしくしくと膝に顔を埋めた。 「どっからもってきたんだい、あれ……」 「新ちゃんが色々さくっと」 「大体ナナリーといるころのは削除されているはずじゃ」 「そこはまぁ色々と。シャルルっちが残してたものとかもあるし……」 「シャルルっち……」 スザク、素が出てる。 ついでに快斗も素が出てきている。 ルルーシュは半ばやけ気味になって、ぶつぶつ呟きながら地面にへのへのもへじを書いていた。その間にも新一がスザクとルルーシュが密談――――ぶっちゃけルルーシュが悪意ひっかぶって死ねば世界は平和になるよね! と言っている時の映像を流していた。隠し撮りにもほどがあるだろオイ。 更にその後に何故こうなったかがシャルルとマリアンヌ、シュナイゼルの計画やら色々織り交ぜて丁寧な解説と共に映像で説明がされる。映像を何処から持ってきたんだとか、そんなことは置いても新一は好き勝手やり放題である。 もういっそのこと全部放り出して逃げ出したい。そんなことを考えていたルルーシュに――――低く冷たい声がかけられた。 「――――お兄様?」 絶対零度。 一瞬にして玉座の周りは氷点下に包まれる。吹き荒れるブリザード。その声に恐る恐るルルーシュが下を見やれば、そこには最愛の妹がとても美しく微笑んでいた。 「降りてきてくださいますか? ああ、あとゼロも」 「……あ、あのなナナリー。これは……」 「いいから降りてこいや」 「「はい」」 二人はこくりと頷き、ゼロは行きと同じようにほぼ一足飛びでナナリーの元へと降り立った。そしてルルーシュも下に向かおうとするが、坂から向かうことは彼の運動神経では出来ない。なのでのたのたと坂を滑り台のように降りる。 何だあの降り方。 小動物か。 なんかハムスターとかそんな感じ。 いや、ハムスターのほうがまだ機敏な気が。 ああ、可愛いなぁ。 そんな群衆からの生暖かい視線に気付かず何とかルルーシュがナナリーの前に降りると、座りなさい、と厳かに告げられた。 彼女の気迫に圧されルルーシュもゼロも正座である。囚人の格好をした少女の前に正座する皇帝と仮面の男。異様な光景だ。 「お兄様、スザクさん。あなたがたはサクリファイスになるつもりだったのですね? 私が考えていたことと同じようなことをなさろうとした。いえ、お兄様が考えていたことと同じことを私がしようとしたのでしょうけれども」 「あの、な、ナナリー」 「あ、えっと、私はゼロ……」 「私たちに平和になった世界を残すために。お二人は世界を欺こうとした。私たちには一言も真実を告げずに死ぬおつもりでしたね?」 「いや、その」 「でもね、ナナリー。ルルーシュもすっごくいっぱい考えて……」 「スザクさん。いい加減それを脱いだらどうですか。センス悪いです」 ナナリー!! カレンがその言葉に納得すると同時にやっぱり駄目かと項垂れる。あれでもC.C.と一緒に前よりかはデザイン頑張ったのに。ルルーシュに至っては半泣きだ。 スザクはナナリーの背後に般若が見えて素早く仮面をとった。群衆があああっ!? と驚きどよめく。しかし大半の人間は妹対兄+幼馴染みの修羅場を見るべきか、スクリーンのどじっこルルーシュを見るべきか真剣に悩んでいた。スクリーンの映像は快斗や新一が嬉々として編集したものばかりだ。主にルルーシュの恥ずかしい映像やら天然の可愛らしい映像ばかりである。そこかしこにスザクがルルーシュにべったりとくっつく映像もちりばめられたために、一部のお嬢さんやお姉さまがたは妄想に必死だ。黄色い悲鳴と野太い歓声が響く中、ナナリーのお説教は続く。 「いいですかお兄様。私のことを考えてくださるのはとても嬉しいですけれど、だからといってお兄様が死ぬことで平和になってどうするんですか。私はそんな平和はいりません。酷いことを言いますが、お兄様のいない平和な世界だなんて私にとっては地獄よりも酷い場所です。そんな世界、私はいりません」 「だがナナリー、俺は数多くの罪を背負って……」 「お兄様の罪だなんてあの白ロールパンの罪と比べたらまだ微々たるものです。あれの極悪非道っぷりに比べたらお兄様の悪行は一滴の滴にも満ちません。大体、自分を必要悪として討たせて死んでいく行為のどこが悪逆皇帝ですか。そんな悪、私は認めません」 取り付くしまもないとはこのことだろうか。ナナリーに圧されてあ、う、え、うううとしか言えなくなっているルルーシュにスザクは深々とため息をついた。 「ルルーシュ、もう諦めようよ……。無理だよもうこれ」 「ま、まだだ! 俺が色々やったことは事実なんだぞ!? 俺は悪逆皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……」 「でもさ、大概ルルーシュの計画ってイレギュラーが出て失敗するし」 「こ、今回は成功させるんだ!」 「十八歳の子供がそんな悲愴な決意して死のうとしていたら普通止めると思いますけどね」 『そーそー。まだ十八歳。高校三年生。じゅうはっさい。じゅうはち。人生八十年ならまだその四分の一も生きていない子供が世界平和を望んだりして死のうとしてんだぞー? 大体普通は大人が守ったり間違ったら叱らなきゃいけない子供を放置してきた周りが悪い。というか誰も気付かないのが悪い。冷静に考えてみろよ、高校三年生のガキだぞ? そこの二人とも。そんなガキに世界の罪を押し付けて死なせて、のうのうと暮らしていけるのかよお前ら』 「大体幾ら人から告げ口されたものであってもそれを丸ごと信じて、今まで助けてくれていた人間を信用出来ないのもある意味凄いですよね。スザクよりもよっぽど最悪な裏切りですよ」 『大体シュナイゼルの手で踊らされてることも気付かないで、よくもまぁ今まで生きてこられたよ本当に……。ゼロのおかげだよな、うん』 「黒の騎士団は大半が流されやすい日本人の構成ですから仕方ないというのもありますけどね。詐欺の被害が凄いですし」 『しかもそこの馬鹿皇帝は自分が死んだあと世界が色々混乱することを考えて、この二ヶ月ほとんど寝ないまま各国の政策だとか対応策だとか纏め上げてるんだぜ? 今からこいつの執務室見てくれば机の上にそんな書類が山ほど積み上げられてるから誰か見て来いよ』 「馬鹿というにはいささか悲愴過ぎますけれどね。まさかこんな無茶をする方が名探偵以外にいるとは思いませんでした」 『……俺もそう思う』 「本当に馬鹿ねアンタ!!」 どおりゃああっ!! と勇ましい声を上げてとうとうカレンが拘束具をぶち壊した。え、ちょっとそれどうなの! とスザクがビビりルルーシュがもはや空笑いを浮かべてこちらへ駆けてくるカレンを見つめた。さすがスザクと張る人外。 「ルルーシュ! アンタちょっと一発殴らせなさい!」 「駄目ですわカレンさん。きっと今カレンさんがお兄様を殴られたら、その時点でゼロレクイエムが完遂されてしまいます」 「あ、それもそうね」 「それは言外に俺がカレンに殴られたくらいで死ぬと思ってるのかナナリー……」 「あら事実ですよね?」 ね? とにっこり微笑みながら何故か上の快斗へ同意を求めてきたナナリーに快斗はこくりと頷いた。何だろうこの有無を言わせぬオーラに既視感がある。例えば名探偵の隣人だとか。 「私もう嫌よ! アンタの言葉なんて信じてやんないから! 世界中がアンタの敵でも、私はアンタに死ぬまでくっついて行ってやるわ!」 「私も同じ気持ちですわお兄様。お兄様がどんなに世界の敵になったって、私は迷いません。最期の最期までお兄様の傍にいます」 「あ、俺もついてくから忘れないでねー?」 『同じく俺もだから忘れんな』 「う、ううう……!! ルルーシュ!! お前はやっぱり凄い男だぜ……!! さすが俺のダチだ! 俺も着いてくぞーっ! この玉城様がお前を助けてやる!」 「アンタはいらないわよ」 号泣しながら叫ぶ玉城にカレンは呆れたようにため息を零した。ジェレミアが苦笑を浮かべながらこちらへと近づいてくる。 「そういうことならば私も貴方に着いていきたいですね、ルルーシュ様」 「……っ、スザク! お前がさっさと俺を殺せば」 「いや、僕も出来るなら君を殺すなんてしたくないんだけど。むしろこのまま攫ってどっか閉じ込めておきたい」 何処かやさぐれた様子のスザクがさらっと危ない発言を零す。って言うか最初からそうしときゃ良かった、と投げやりに呟くスザクにルルーシュは味方が誰一人いなくなったことに気がついて頭を抱えた。 「……だがな、もう俺は引き返せないところまでやってしまったんだ。今更生きるだなんて虫が良すぎ……」 口々に紡がれる言葉がどんなに嬉しくても、もはやもう引き返せない。そう言おうとしたルルーシュの言葉を、群集から怒鳴るように叫ばれた声が遮った。 「ッ、オールハイルルルーシュ!」 「え、っ」 「あ」 「え?」 「まぁ」 「おっ」 「オールハイルルルーシュ! オールハイルルルーシュ!!」 「……リ、ヴァル……」 「オールハイルルルーシュ! オールハイルルルーシュ!!」 涙で顔をぐちゃぐちゃにして、柵から身を乗り出すようにしながらリヴァルが必死の形相で叫んでいた。目を見開いて声も出せないルルーシュに、彼は悲痛な声で叫ぶ。 「オールハイルルルーシュ! オールハイルルルーシュ……ッ!! 死ぬなよルルーシュ! もう、誰も友達に死んでほしくねぇんだよ!」 リヴァルの“友達”という言葉にルルーシュは息を呑む。まだ彼は自分を友人だと思ってくれているのだろうか。少し呆然とするルルーシュの耳に、更に重なった声が飛び込んできた。 「……オール、ハイル、ルルー、シュッ オールハイル、ルルーシュッ!」 「扇……」 「オールハイル、ルルーシュッ! オールハイルルルーシュッ!!」 拘束具に未だ体をくくりつけられたままで、扇が涙を零しながら叫んでいた。しゃくりあげながらも彼は真っ直ぐにルルーシュを見つめてくる。彼の瞳にはもう怒りはなく、ただただ後悔の色が浮かんでいた。 「……オールハイルルルーシュ! オールハイルルルーシュ!」 「「オールハイルルルーシュ! オールハイルルルーシュ!」」 そしてその声にゆっくりと他の声が重なっていく。群集が涙を、あるいは笑みを浮かべながらルルーシュの名前を叫ぶ。大歓声といってもいいその声に、微笑を浮かべたナナリーがそっとルルーシュの手をとった。 「……お兄様。もう、いいでしょう? あなたは、生きていいんです」 反対の手も手袋に包まれる。その感触に横を見やればスザクが苦笑していた。 「もう、諦めようよルルーシュ。君が生きることを望んでくれる人たちが、こんなにいるんだからさ」 『お前はもう十分世界を愛しただろう? そろそろ、今度は世界に愛されてもいいんじゃないか』 「名探偵に同意するよ。ルルーシュ、今度は君の番なんだ」 世界が君を、愛したいんだって。 快斗の言葉が最後に耳に届き、ルルーシュは込み上げる熱い何かを押さえることが出来ずにほろりと涙を零した。溢れ出る透明な雫が頬を濡らし、嗚咽が漏れる。ナナリーも笑いながら涙を零して、兄の体を抱きしめた。その二人を同じく泣いているスザクがぎゅっと抱きしめる。 そんな三人を見てカレンは涙を拭いつつ微笑んで、ジェレミアが拘束されていた人々を解放させていく。解放された神楽耶が泣きながら三人に向かって走り出して、その後ろに玉城や扇、それにリヴァルもその場からトレーラーへと駆け出す。 その光景に微笑んでいた新一と快斗の耳に、付けられていたイヤホンからくすくすと笑い声が聞こえてきた。 『……いいのか? 元の世界に帰れなくなっても』 「まだわからねぇだろ。方法がそれしかないって決まったわけじゃない」 「そうそう。ルルーシュが死なない以外の方法があるかもしれないじゃん?」 『本当に馬鹿だなお前達は。アイツが死なない限り元の世界には帰れないかもしれないというのに』 「いや、まぁそのうち帰れるでしょ」 「そうだ。それに俺はな」 ファクトスフィアから送られてくる映像は温かさに満ちていた。誰も嘆き悲しむこともなく、そこにはただ優しさが溢れている。世界から弾き出される筈の少年は、その世界に今確かに愛されているのだ。だから新一は、悪戯っぽく魔女へと告げた。 「お伽噺はハッピーエンドのほうが好きなんだよ」 そうだな、と魔女はイヤホンの向こうで楽しげに呟いた。 帰れないかもしれない、と魔女は言う。 帰りたくないのか、と魔王は問う。 帰れないの、と騎士は聞く。 その言葉に彼らは笑って首を振る。 世界が変えられるんだから、帰る方法ぐらい幾らでもあるだろう。 違いないですね、と優しい世界を見ることができた少女は微笑んだ。 世界を愛した少年の、世界に対する反逆のお話は、これでおしまい。
“終わりがきて始まるのは、 介入させてみよう、第四弾。以下反転 好き勝手やりまくってすみませんでした……!! ハッピーエンドを模索した結果こんなことに。快斗と新一がいればここまでくる前にもっと収拾ついているとは思うんですが、あえて最終回につっこませてみました。自己満足。快斗も新一も嘘はたくさんついているのできっとルルーシュの苦しみは解るはず。そして新一さんは犯人を死なせないことを信条にしているので絶対にしなせないだろうと。C.C.のギアス+パンドラ絡みはそのうちやりたいです。ただ長くなりそうなのでそこはまた別の機会に需要がありそうならばやります。 きっとこの後は世界中にルルーシュファンクラブが出来ますよ。名誉会長はナナリー。日本支部は神楽耶様。中国は天子様。たぶんラウンズも増える。ゼロの騎士はたぶんもういらないだろうから、1がスザクで2がジェレミア。3、カレン。4、ジノ。5、咲世子さん。6、アーニャ。7が永久空席(笑)。8がセシルさんで9がロイド。10が新一、11が快斗で12がC.C.。10、11に二人がいるのはあえて。よく10番はMFのエースナンバーにされてるしね!(笑)でもラウンズは名目だけで皆好き勝手してるから権限与えてるだけ……。1〜6だけしかラウンズっぽい仕事はしません。 そして快新ペアとC.C.はギアス調査に出かけたり。キャメロットはあくまでキャメロットとしての仕事しか。ジノはルルーシュに近づいて彼を理解しようとしてみたり、アーニャは咲世子さんとナナリーの騎士っぽいことしてたりも。スザクとカレンは喧嘩が多い。ジェレミアさんは趣味でオレンジ果樹園を始める。(笑) そんな風に優しい世界を見るのがルルーシュとナナリーの幸せ。 ここまで読んでくださり、ありがとうございました! |