「…………少々追い詰められているようだな。まぁ、彼がいる限りみすみす負けるようなことはないだろうが」

 そう言ってくすりと微笑んでみせる『ルルーシュ』にロロはため息をつくしかなかった。

 生徒会室の中にはロロと『ルルーシュ』しかいない。シャーリー達はミレイが安全だったということを確認すると、とりあえず部活やバイトに出かけていった。ミレイのことは心配であるが、シュナイゼルの庇護を受けているのならば自分達に出来ることは何も無い。
 逆に言えばミレイが――――すなわちアッシュフォード学園生徒会長が安全である、と学園内に示すにはシャーリーやリヴァルが普段と変わらぬ態度を見せるのが一番なのだ。だからこそ、彼らは生徒会室を出ていった。

 そんな中で、ロロと『ルルーシュ』の二人だけがこの部屋に残っている。時折ちら、と時計を見やる彼の姿はどこからどう見ても『ルルーシュ』だ。例えあの枢木スザクが相対したとしても、簡単には気付けないだろう。それほどまでに、彼は『ルルーシュ』だった。
 けれども、この一年間ルルーシュを傍で見つめ、そして愛を受けてきたロロには彼がどんなに完璧であっても見分ける自信がある。それを彼に話せば『仕方がないけれども、ショックではあるな。自分でも出来栄えがいいと思っているんだが』と言われた。
 もちろん最初は気付かなかった。それでも、ずっと傍にいれば気付いてしまう。枢木スザクが学園にずっといる立場では無くて良かったと、ロロは少し安堵していた。

「……負けるわけ、ないです。兄さんが。必ず勝ちます」
「それは当たり前だ。何と言っても、アイツが彼についているんだからな」
「……戦場の経験は無いでしょう」
「それでもだよ、ロロ。アイツは戦場に出たことはないけれど、命のやり取りならば何度も繰り返している。それでいて悪運が強いからな。アイツがいるならば彼は絶対に勝てるさ」

 優雅な手付きで紅茶をいれ、『ルルーシュ』はテレビを見ながらうっすらと微笑む。絶え間なく流れるニュースは中華連邦のものばかりだ。何度も何度も画面には黒い仮面が映る。その光景にロロの胸は少し軋んだ。

「……兄さん、無理してないかな」
「してるんじゃないかな。彼はそういう人だろう?」
「……あなたは、気にならないんですか? 兄さんに着いていったあの人が」
「気にはしているさ。心配はしていないけれどな」

 さらりと言い切られた言葉にロロの眉根が寄るのを見て、彼は肩を竦めた。当然だ、と言いたげなその様子に彼らの絆のようなものを感じられて歯噛みをする。
 ルルーシュとロロの間には、そんな“絆”と呼べそうなものはないだろう。
 それを自覚すると途端に目の前の兄と同じ顔をしたものが憎々しく見えてきて、ロロは硬い声音で言い捨てた。

「……その口調、やめてください。今この部屋には僕ら以外誰もいないんですから」
「――――はいはい、解りました。ほんと、君もブラコンだよね。ルルーシュも相当なシスコンだけどさ」

 ロロが言った瞬間、口調どころか声音も気配もガラリと変えた相手に少しだけ後悔した。見た目は完璧に兄だというのに、中身は違う。その違和感が気持ち悪く思えたのだ。
 そんなロロの様子なんて気にした様子もなく、彼は紅茶を口に含む。その仕草もルルーシュのような優雅さはなく、余計腹立たしくなっただけのような気がした。

「……心配はしないんですか」
「だってアイツが負けるわけねーもん。どんな時でも悪運はものっすごく強いんだぜ? 幾らルルーシュが悪運無くったってアイツがいりゃ大丈夫だよ」

 ニコニコと笑いながらそう言う彼に、もはやロロは会話を続けることを放棄した。
 馬鹿馬鹿しい。ロロが感じている心配や焦燥など、この男には塵にも足らないことなのだろう。そんな相手に何を言ったって無駄だ。
 最初からロロに出来るのは、ルルーシュが無事であるよう祈ることと。

「…………いざとなったら、兄さんだけでも助けてきてくれるといいけど」
「だから大丈夫だって。アイツが負けるわけなーいー」
「あぁもう黙っててくださいっ!」
「無理。あーあ、いっそのこと新しいマジックの練習でもしてようかなぁー」
「見られることだけはしないでくださいよ。でないと殺しますから」
「へーへー、大丈夫ですよ。なんたって俺は世紀の大怪盗なんですから」
「そんなこと、こちらでは知ったこっちゃないです」
「……あーもー、なんでこっちにはルパンもホームズも無いんだろうなぁ……」
「知りません。……あ、カイトさん。後でシステムの書き換えお願いします」
「へーへー……」




 扉の開いた鳥籠の学園で怪盗と共に、兄と怪盗の恋人である探偵を待つことだけだった。






“A,学園には偽者ばかり”











 介入させてみよう、第一弾。
 玉砕した気がしなくも、ない。(爆)
 新一はルルーシュについていて、快斗はルルーシュのフリをして(ロロの監視も兼ねて)お留守番中。ギアスかからないのでかなり余裕。新一さんは補佐を勤めております。C.C.とは意外に仲がよく、カレンとも仲がいい。でもルルーシュも新一も、二人とも体に気を使わないからそういうところは二倍になったと周りに嘆かれる。