キラキラと輝くステージの中を、歌姫二人が駆け、踊る。その背にはまるで翼が生えているのではないかとアルトは思った。 「……妬けちゃうな」 「え?」 「姫、見惚れてるでしょ。……恋人が隣にいるのに、目移りなんて良くないよ?」 「アイツらは別だろ。お前だって凄いと思わないのかよ」 「……解ってますって。まー、銀河の妖精と超時空シンデレラには勝てません。何せ俺はしがないスナイパーだからね」 暗い客席でも隣の恋人が肩を竦めたのが解る。大丈夫、彼は戯けているだけだ。本当に目の前のステージは素晴らしいのだ。他の観客だって皆、二人の歌姫に見惚れている。美しい銀河の妖精と、可愛らしいシンデレラに。 ふと、彼女達二人の視線がこちらに向いた――ような気がする。思わず笑いながら手に持っていたライトを振ると、彼女達の顔が一層華やいで、満面の笑みが浮かぶ。よくまぁこの距離で見えるものだ。 そんなことを思いながらライトを振っていたら、不意に肩が抱き寄せられる。 「ミシェル?」 「……こっちも見てよ」 「は、」 瞬間、ぐっと縮まる距離。唇の間の距離はゼロ。 目を見開きつつも仕方ないな、と嫉妬深い恋人に苦笑して目を閉じようとしたら――――物凄い勢いで飛来した何かが、ミシェルの頭にぶち当たった。 「……っ!!」 「み、ミシェル!?」 ころん、と傍らに転がったのは真白い羽の形の装飾物。……これ、今さっきまで似たようなのを見たような。 「ま、ったく! 姫は俺のだって何回言えばわかっ、ぐっ!!」 「うわぁっ!?」 再度抱き寄せられたその時、今度はマイクが飛んできてまたもミシェルの、今度は額にぶつかった。 「……アイツら、いいのか?」 飛んできた方向を見やる。周りの目は完全にこちらへ向いているが、考えたら怖いので無視する。舞台の上ではランカが予備のマイク――オオサンショウウオの携帯をマイクへと変化させ、何事も無かったかのように歌を続けている。 『わたしそれとも、』 『わたし?』 挑発的な視線が二つ、こちらを射抜いて。 隣の席の恋人が深々とため息をひとつ。 「一応、姫の恋人は俺なんだけどな」なんてぼやきが聞こえてきて、笑った。 『『たったひとつ命をタテに』』 “いまふりかざす 感傷!” |