―───お前はいつもその総ての想いをありのまま口にする。 『神田は優しいですね』 『漆黒の髪、長くて綺麗です』 『あなたぐらい強くなれれば全部守れるのかな……』 『大好きですよ』 『神田は僕のことどう思ってますか?』 無邪気に聞いてくるその顔をこ突く。 知るかよ、と吐き捨てて三歩前を歩きだすけれど。 ────微かに熱い頬の熱は消せそうに、ない。
Because I am a man 月光を弾く白い髪がさらさらと手を滑っていく。 指で弄ぶように何度も触れるが、少年が起きる気配はない。 やり過ぎたか、と思いつつ改める気にならないのは誰のせいだろうか。 耳に残って離れない、甘い声。 問われた台詞に返す言葉は、即座に思い浮かんだのだけれど。 「言えるかよ、馬鹿モヤシ……」 また、体に集まっていく熱。 少しでも考えてしまった言葉は、想いは直ぐには消えてくれなくて。 どこまで自分がこの少年に溺れきってしまっているのかが、嫌でも解ってしまう。 だからといって伝えることも出来ないのだけれど。 “それ”を言うには自分の気性が邪魔をするのだ。 「…………」 しばらく考えて、そっと起こさないようにベッドから抜け出す。 そして机に向かい、ペンと紙を取り出してみた。 白い紙に、文字が書き込まれては塗り潰され。 真白かった紙は、次第に漆黒に染まっていく。 「………………」 ――五分経って、再びベッドに潜り込んだ。 書けるか、手紙なんて。 不貞腐れたように横になると擦り寄ってくる温もりにふっと笑う。そっと抱き締めて、慈しむように優しく撫でた。 安心したように少年───アレンも胸に抱きついてきて、神田はふっと瞳を和ませる。 ───まだ言えない、ことがある。 たくさんたくさん、隠していることがある。 でもそれでも。 「…………“ ”」 閉じた瞼に囁くようにキスをする。 『神田……それでも僕は誰かを救える破壊者になりたいです』 “破壊者”なんてならなくていい。 お前は甘いこと言って、歩き続ければいいんだ。 理想を追って、その度泣いて苦しんで。 それでも決して曲げなければいい。 苦しくなったら言ってやる。 『口にしたことを守らない奴は嫌いだ』 だから、ずっと歩き続ければいい。 悲しみなんて俺に置いていけ。 お前の後ろは俺が守ってやるから。 お前が誰かを守るというならば、俺はお前を守るから。 いつまでも、守るから。 お前の望む甘い台詞は吐けないけれど、そのかわり態度で示してやるから。 だから。 ────死が二人を別つまで、ずっと共にいられたらいい。
“いつまでも、君の味方であるように” |