『正しい、優しい気持ちで育てればいつまでも友達でいてくれる。……解るよね?』

 あの言葉が、自分を未来へとつき動かした。





「……こんなとこにいたんだ」

 がさがさと葉の擦れる音が響いて、後ろから呆れ半分でかけられた言葉に振り向いた。そこには思った通りの表情を浮かべた姿があって笑う。そんな自分に彼はちょっとため息をついて、やれやれといったように苦笑を浮かべて隣に立った。
「よく解りましたね。見つけにくい場所なのに」
「森の中全部回ったから」
 さらっと簡単そうに言うけれど、決して簡単なことじゃないのだ。だってここは特に何の目印もなく、よっぽどこの森に詳しくなければ見つからない場所。……例えば、自分のような。
 ただその場に突っ立っているだけの自分の隣にいる、彼を見上げる。初めて会った時よりもずっと逞しく、高くなった身長。けれど、昔から見上げていたので特に何も変わらない。
 視線に気付いたのか、彼が目線を下げて自分を見やった。
「何?」
「何でも」
 そう言って、少しだけ頭を隣へともたれかけさせる。すると優しい腕が肩に回ってきて体を引き寄せられた。
「……ここから、始まったんだよなぁ……」
「そう、ですね」
 しみじみと呟いた彼の言葉にそっと微笑む。
 そう、全てはこの場所から始まったのだ。あの時、この人がここにいてくれたから今の自分がいる。
 そして今日、自分は―――。

「さて、そろそろ戻るか。ブルーが怒ってんぞ? 『花嫁が消えてどーすんのよっ!?』って」

 腕を広げて大袈裟な身振りをしながら茶化すように喋る彼と共に笑う。  そして横にある大好きな腕に腕を絡めさせた。
「そうですね。帰りましょうか」
「あぁ、帰ろうイエロー」
「えぇ、レッドさん」

 これからは、二人。
 貴方が私の帰る場所、私が貴方の帰る場所。
 ずっと、一緒に―――。