※19話以降なんて総無視。捏造だらけの願望的話です。騎士団(カレンは除外)に厳しめです。読んでからの苦情はご遠慮願います。
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 ゼロの正体は神聖ブリタニア帝国第17皇位継承者、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアというらしい。
 それを聞かされても正直に言えば、ラクシャータは特に何も感じることはなかった。「へー」と煙管を吸いながら呟いただけだ。更にギアスという超常の力を持っていたと聞かされても「ほー」とだけしか言わなかった。
 興味がないのだ。皇族にもギアスの力にも。例え今までのことが全てそのギアスの奇跡だったとしてもラクシャータには一切興味がない。彼女がしたいのはナイトメアの研究、もしくはサイバネティクスの研究だけなのだから。他のことはどうでもいいのだ。
 しいていうならば、気にかかるのはゼロを欠いた黒の騎士団がこの後もやっていけるかどうかだけだろう。潰れるようならばさっさとどこかにトンズラしなくては。命は惜しいし、資金が潤沢な場所でないと研究は続けられない。だからどちらかといえばラクシャータ的にはゼロがいなくなったのは非常に残念なことだった。
 「ゼロはいらない!」と声高に言う扇にやれやれとため息をつきつつ、ラクシャータはふと白衣のポケットに入れていた小型のマイクロチップを取り出した。その中に記録されているもののことを思い出し、コンピューターに読み込ませる。ロックごとコピーしたので恐らく気が付かなかったのだろう。何重にもかけられたロックもラクシャータの頭脳と世界最高峰のパソコンがあれば楽、とはいかなくとも時間をかければ外せる。停戦のため暫くやることのなくなったラクシャータはそのメモリの解析に明け暮れ――そして漸く開いたその中のものに、思わず笑うことしか出来なかった。



「ちょっと見てみなよ、面白いから」
 そう言うラクシャータに促され、扇達はモニターを見つめた。ラクシャータが端末を操作すると暫くして黒い画面から突然人のアップに切り替わり、その場の皆はぎょっとして目を見開いた。

『あれー? ……これ、電源入ってるよなぁ?』
『もうリヴァルったら! そんなに近づいたら後で見た時びっくりするじゃない!』
『だって確かめないとじゃん。さてと、ビデオもいい感じだし後は……』
『ほーらルルちゃん! 大人しく捕まりなさい!』
『嫌に決まってるでしょう! 大体、どうして俺がそんなもの着なくちゃいけないんですかっ!!』
『あら、綺麗になることは美人の義務なのよ!』
『誰が美人ですか!!』
『いや、美人だと思うよ。きっとすっごく似合うんだろうなぁ』
『スザクお前っ!!』
『いいんじゃないかしら。ルルーシュ君って細いし綺麗だからとっても似合うでしょうね』
『……カレンのその服も似合っているよ。今にも誰か殴り飛ばしそうだ』
『……あら、ありがとう』
『でもお兄様、もうそろそろ着替えないと時間が……』
『ほーらナナちゃんもこう言ってるんだし、大人しく着替えなさーい!!』
『着替えさせてあげようか』
『スザク、お前それはどうかと思うぜ……』
『ルルの……着替え……生着替え……』
『シャーリー……声に出てるわよ』
『えっ!? ……あ、もしかしてカレンもルルの……』
『考えるわけないじゃない!!』

 場所はどうやら学校のようだった。制服を着た少年少女が何故か手に手に衣装を持っている。映っている中には見覚えのある面々もいて、扇達は驚いた。
「ゼ……ルルーシュ?」
「枢木スザクも」
「あれってナナリー総督だよな?」
「え、カレン?」
 そこには露見したゼロの正体であるルルーシュや、ラウンズの枢木スザク、総督だったナナリーやここにいるカレンの姿があった。ここにいる面々はカレンがアッシュフォードで学生をしていたことを知っている。つまりこれはその学園内のビデオなのだと彼らは理解した。
「……なんでゼロ、あの人にドレスもって追いかけられてんだ?」
「しかもあれってキャスターのミレイ・アッシュフォードじゃねぇ?」
「んで、枢木スザクは何故にセーラー服……?」
「…………まさかそんな趣味が」
「違うわ! これ、ミレイ会長が考えた男女逆転祭りの時の映像よ!」
 覚えのある光景にカレンが驚きの声をあげた。モニターに映るのは、まだ誰も欠けてない、懐かしい生徒会室の風景だ。この時もカレンは騎士団に属していたけれど、あの空間は確かに優しく暖かく、そしてとても楽しかった。
「これ……どうして」
「他にもあるわよ〜」
 カレンが驚きに目を瞠っているとラクシャータが操作したのか別の映像が再生される。

『水着……うん、これアレだな。マズイな』
『ええ、マズイわね』
『ほんと、ルルったらどうしようもないんだから……!!』
『全くだわね……』
『何だお前達その台詞は。別におかしなところなんてないだろう。俺に言わせて貰えばこの状況こそが既に恐ろしいぞ』
『や、違うんだよルルーシュ……』
『? 何が違うと?』
『ねぇ会長。ルルにはスザク君つけとかないと駄目じゃないですか?』
『そうねぇ……こんな危険物放置してたら誰かにお持ち帰りされちゃうわよね』
『ですね。ってスザク!! 怖いから!!』
『え、何が?』
『顔! 顔! お前守ればいいだろ!』
『ほんと、どうしようもない……』
『カレン。言いたいことがあるならはっきりと言ったらどうだ?』
『別に。無自覚な色気は罪なんだって初めて知っただけよ』
『は?』

「他にも〜」

『お兄様、調理実習でクッキーを焼いたんです。食べてくださいますか?』
『もちろんだよナナリー。全部大事に食べさせてもらうからな。そうだ、折角だからお茶にしようか』
『はい!』
『ううう……』
『諦めろよシャーリー……ナナちゃんには勝てないって』
『しかもなまじっかルルーシュも家事得意なのがアレよね〜』
『ルルーシュ! 僕にも頂戴』
『ん? って、っ!?』
『んっ、ありがと。ナナリー、すっごく美味しいよ』
『ありがとうございます、スザクさん』
『……今、ルルーシュが食べてたのとったわよね』
『……ふぇーん! どうしようカレン! このままだと私達……!』
『だから私を頭数に入れないでってば!』

 幾つも幾つも再生されるそれらの映像は、イベントごとから日常的なものまであった。数は少ないけれどもこの一年、カレン、スザク、ニーナ、ナナリーがいない、つまりロロがいる映像もそこにはあり写真もたくさん映し出された。それのどれもが楽しげで。そこに映るのはただの学生であるルルーシュやナナリーやスザクやカレンだった。
 スザクは少しルルーシュにべったりしていて(というかへばりついていて)、今では考えもつけないけれどこれが日常だったことをカレンは思い出す。シャーリーには同じ片思い仲間だと誤解されていて、ミレイとリヴァルがはしゃぎニーナやナナリーはくすくすと微笑んでいる。四人がいなくなった後もミレイのお祭りに振り回されるルルーシュやシャーリー、ロロの姿がそこにはあってみなどれも楽しそうだった。

「蜃気楼のデータの中にあったやつよ」
「え?」
「チェックしてた時に偶然ロックされてるこれを見つけてさ。アタシが作った記憶のないやつだったから後で解析しようと思って忘れてたワケ。……ゼロが蜃気楼に自分でいれたやつみたいよ」
「ルルーシュが……」
 蜃気楼にデータを入れたということは彼はこれを見ていたのだろうか。それとも機体の中にしか隠せなかっただけなのだろうか。優しい思い出を。戦うための機体にしかしまいこめなかったのだろうか。たくさん湧いてくる疑問に答えてくれる人はもういない。
「…………楽しそう、だよな」
 不意に玉城が呟いた一言に皆がハッとして顔を見合わせた。
「ほんと、楽しそうだよね。こんなの大事にしまっておくヤツに見えなかったケド」
「…………アイツ、嘘つきだから」
 ラクシャータの言葉に、カレンはじんわりと何かが胸の底から滲み出てくるのを感じた。
 そうだ、彼は。ルルーシュは。
 裏切ってなんかない。自分達を裏切ってなんかなかった。
「ジェレミア・ゴッドバルト!」
 カレンは端末を操作してジェレミアを呼び出した。それに扇達がカレン? と問うのを無視してカレンは現れたジェレミアに笑いかける。彼は違う。彼はちゃんとルルーシュを知っているはずだ。
「ルルーシュは此処から追い出されたの! 追っかけるから貴方も来なさい!」
『なっ!?』
「カレン!?」
 カレンが叫んだ一言にラクシャータ以外の全員が動揺した。ジェレミアは目を見開いた後直ぐに冷静さを取り戻し、カレンを注意深く見つめる。それはカレンが信頼をおける人間かを量っているようだった。
『……紅月カレン。あなたは、今ルルーシュと仰いました。どういうことでしょう?』
「簡単なことよ〜。今この場の人間はゼロがルルーシュだって知ってるの。シュナイゼルに知らされてね。んで、ギアスとかいう力をアイツは使ってて、黒の騎士団はその力で使われてて自分達は裏切られたんだ! ってそこの幹部達にブリタニアへ売られたのよ。でも売られる前にロロだっけ? あの子がルルーシュを連れ去って今は逃亡中ってワケ」
『……何と……っ!!』
 ラクシャータの大分端折った説明でも理解したのか、ジェレミアはわなわなと体を震わせると厳しい目つきで幹部達を睨みつけた。その視線は憎悪といってもいい。そんな目を向けられて、扇は気圧されながらも言葉を発した。
「君のその忠誠も、ルルーシュのギアスによるものかもしれないだろう? 君は、それにカレンもあんな裏切り者を追わなくても……」
『貴公ら、いや貴様らは酷く愚かだ。見えるものしか信用せずに、隠されたものに気付かない。そんな組織は滅びの道しかない』
「なっ!!」
「き、君はギアスをかけられているから……!」
『私のギアスは解けている。何故なら、私はギアスキャンセラーを持つ者。かけられたギアスを自分のものも他人のものも解くことが出来る』
「えぇ!?」
『お前達は知っているのか。ルルーシュ様のギアスの全貌を』
「誰もに自分の命令をきかせられるんだろう?」
『たった一度限りだ。一人に一度しか命令できない』
「一度、だけ……?」
『そしてあの方は、黒の騎士団に関してはギアスをかけたことはない。いや、紅月カレンあなたを除いてだが』
「貴方は、私がどんなギアスをかけられたか知っているの?」
『聞いたことはある。まだギアスがどんなものなのか知らなかった頃にあなたへかけて試したということを。二度目がかからなくて一度だけとは解ったものの、その後疑われてしまって大変だったと。そしてかけたギアスは貴方が日本人のハーフか否かだけだということも』
「え、それだけだったの?」
『そうだ。……裏切られた、か。あの方を知らないくせに、知ろうともしなかったくせに良く言えたものだ。あの方がいなければ気様らなどとっくのとうに死んでいただろうに。こんな段階まで漕ぎ着けもせず、ただのレジスタンスとして一生を終えただろう貴様らをここまで導いたのはあの方だ。それを棚に上げてただ裏切られたなど、どの口が言うのだ!!』
 ジェレミアの激しい恫喝に扇や玉城、南などが震え上がった。藤堂は眉間に皺を寄せ千葉は少しだけ目を伏せる。ジェレミアは涙すら浮かべながら激しく彼らへと叫んだ。
『裏切られる、というのは相手を知り信頼したものが言える言葉だ! 何も知らなかった、知ろうとしなかった貴様らに言える言葉ではない! 確かにルルーシュ様はギアスのことは話さなかった。貴様らを駒のように使っていたかもしれない。しかし貴様らも全てをルルーシュ様任せにして何もしなかっただろう! 責任を負う立場にいたのは何時だってあの方一人だ! 全てを考えていたのも、あの方一人だろう! 私はあの方が優しいことを知っている。この戦を起こした理由も、その強く気高いお心も、自分は捨て置き他人を守ることにだけその力を使うあの方を……! 何も知らない貴様らに、あの方を悪し様に言う権利などない! 無知で傲慢な愚か者共め!!』
 ジェレミアの剣幕に圧され誰も何も言うことが出来なかった。カレンは泣きそうになりながら笑みを浮かべる。滲みかけた涙を手の甲で擦って、ジェレミアへと笑いかけた。
「あのね、私忘れてたの。アイツは完璧で冷酷非道なゼロなんかじゃなくって、ただの妹馬鹿で超ド級のシスコンってこと! 頭はいいけどちょっと間抜けで素直じゃなくって、本当は凄く優しいってことも。……また繰り返すとこだった。アイツは全部背負っちゃうから誰かが傍で見てないといけないのに、忘れてたのよ」
『君は生きろ』
 ああ、あの言葉がなければきっと気付けなかった。カレンはまたルルーシュの嘘に騙されるところだった。
 ルルーシュは嘘つきで。本当のことなんてひとカケラほどしか口に出さない。でも解る。ルルーシュが優しい嘘つきなことをカレンはナナリーに聞いて知っていた。それなのに、また言葉を求めて見失うところだったのだ。

 だから、今度は間違わない。

『……紅月カレン。君はあの方を少なからず知っているようだ。ならば私は貴女と共に行こう』
「ええ!」
「ちょい待ち! アタシも一緒に行くから連れて行きな」
「え!?」
「ラクシャータ!?」
 カレンが出て行くのを止めようとした扇達が更にぎょっとしたようにラクシャータを呼んだ。なに? と当然のように問い返すラクシャータに扇は焦ったように制止をかける。
「ラクシャータ! 君まで何故!」
「だってゼロのいない黒の騎士団なんてただの烏合の衆でしょう? 藤堂だけじゃどうにもならないことは証明されてるんだし、ゼロがいないってことはまた簡単に壊滅させられるに決まってるじゃない。だから逃げようと思って」
「ゼロはただのペテン師だったんだぜ!?」
「それがどうしたっていうワケ?」
 玉城の声に心底不思議そうにラクシャータは首を傾げる。不思議そうな彼女の様子に扇は二の句が次げず、杉山がカッとしたように怒鳴った。
「どうしたもこうしたも、ゼロの奇跡は全部嘘だったんだよ! 俺達はただの駒だったんだ! 裏切られてたんだ!」
「だから、それがどうしたっていうのさ」
「え……」
 杉山の怒号も気に留めた様子なく、ラクシャータは煙管から口を離した。細められた目が扇、南、杉山、玉城そして藤堂、千葉と順々に向けられて呆れたように煙とため息が吹かれた。
「アンタ達、日本を取り戻したかったんだろう? 経過が正しくなければ結果がどうなろうと構わないのかい?」
「結果?」
「ゼロは詐欺師だったかもしれないけど、起こしたことは『本当』だろう? 事実になってる。それがどんなことだろうと全てあの男の実績だ。それらはここまで騎士団が大きく成長するために必要なことで、日本の奪還に必要なことだったんだろう? なら、つまりアンタらは正しいやり方で――正々堂々としたやり方じゃないなら、日本を取り戻せずに死んだほうがマシってことを言ってるんだね?」
「そ、そんなことはっ!」
「だったら何でソレにこだわるんだい? アンタらは結局、ゼロが自分達を信頼してくれていなかったことを恨んでるんだ。何も知らされないことに憤ってんでしょう? 自分達が目を逸らしてきたものを棚に上げて糾弾する相手を、生贄を作ってるだけだ」
 ラクシャータの言葉に上手く返せる言葉もない。扇達が黙ったのを視認してため息をつき、カレンとラクシャータはその場を出て行った。
 暫くして斑鳩から二体のナイトメアが飛び立っていく。たった一人となった魔王を探して。
 それはまるで、優しい楽園を飛び出した小鳥にも、似ていた。




“胸の奥、秘めた底の幸せを知る”