運命のルーレット廻して
 ずっと 君を見ていた






Fate should carry out a roulette time






「……なんかな」
「ん?」
「時々無性に腹立つことがある」
「何に?」
「……昔の自分」




 少し推理が得意なだけの子供がいた。
 確かに頭脳はそこらの大人よりもずば抜けていた筈だ。
 けれどその行いは周りの子供と変わらなかった。
 顕示欲と自己満足のため。正義のためだなんて思ったことは、無いだろう。
 ホームズを目指していた自分は、あの頃何かを見失いかけていた。
 こうして、時たまふと思うのだ。


「俺は、探偵なんて名乗る資格はないんじゃないかって……」


 今はもう知らなかった世界を知った。
 見えていなかったこと、本当に大切なこと、道は一つではないこと。
 だからこそ、昔の自分を思い出すと少し辛くなる。
 愚かだった子供を思い出すと、苦しい。
 弱気になる。


「…………なーに言ってんの」


 ふわり、と温もりが体を包んだ。
 目の前には海と、それから自分を抱きしめるこの世で一番信頼できる腕。
 笑みを含んだ声が耳元で聞こえた。


「“昔”でしょ?新一が、コナンになっちゃう前の話。確かにあの頃の新一はヤなヤツだったかもしんないけど、今は違う。俺が知ってる“名探偵”は気障でカッコつけで無鉄砲で強くてカッコよくて美人で可愛い、優しすぎるくらい優しい人だよ」
「…………かい、と」
「それに、もし新一がコナンになってなかったら“俺”のことなんて見向きもしなかったろーしー?今の新一があの時の現場に居合わせたら、もっと違う展開になってたかもだし。そう考えると、俺は昔の新一がちょっとばかしお馬鹿さんでも良かったと思ってるけど」


 そう言ってにへらと笑う男の顔を見上げた。
 夕日が水平線に沈んでいく。オレンジ色の光が彼を照らしていて、綺麗だなと思った。
 そっと頬に添えられる手に瞼を閉じる。一瞬触れて、直ぐに離れていく温もり。



「俺達が出会うのは運命だったんだよ?だから新一の過去も重要な一つで、ソレが無かったらここにこうしていないと思う。もし、神サマがルーレットかなんかで運命ってやつを決めてたとしたら、俺的には超感謝だね!」
「…………ばーろ、運命なんてあるわけねーだろ」
「うぅわ夢の無い発言……!!」






 本当は、信じてる。
 運命のルーレットを廻して、指した針の先には。





「ほら、さっさと帰るぞ!」
「えーん、新ちゃんのいけずー! 少しくらい信じてくれたっていいじゃん! 俺はこんなに愛してるのにー!」
「…………別に」
「ほぇ?」
「…………………………別に運命は信じてないけど、お前と出会ったことに感謝してないとは言ってねぇだろ」
「……っ……!! し、しんいち――――っっっvvv」
「だぁぁぁくっつくなバカいとっ!!」




 誰よりも大好きな君がいた。






“ずっとずっと、瞳を逸らさずに生きていくから”