ねこのここのねこうちのねこ 「…………ああ」 「ん? どしたのアリス」 「今日はお前の日だな」 「……………………へ?」 カレンダーを見て、今日クラスメイトが何か力説していたことを思い出した。 そのまま視線を下へと移せば膝の上でごろごろ懐く図体がデカイものが目に入る。 あまりに気持ちよさそうに俺の手にじゃれついているものだから、いつもなら引き剥がすところを止めてやった。 「今日2月22日だろ?」 「うん」 「2が続いてるから、222で“にゃんにゃんにゃん”なんだと」 「………………………………」 「どうした?」 「…………アリスの口からそーいう言葉が出てくると妙にそそられ……」 「魚魚魚魚魚魚…………」 「にゃーっ!!!!」 馬鹿なことを言う相手を沈める最強の呪文を唱えて見せれば猫(?)はがばりと耳を手で塞いでみせた。 魚が苦手な猫って・・・・と思いつつもまぁ、俺を美味いとかイロイロ猫らしくないヤツだからそんなこともあるのだろう、多分。(←別の意味なら食べられてる/笑) まぁ普通の猫は生首になった状態から体が生えたりしねぇし、そもそも生首になった時点で生きてないだろうし。 …………何か色々考えると無限ループにはまりそうだ。つーか、何で幼児期の俺はこんなものを生み出したんだ。 どうせならホームズとかそこらへんならいいものを、何故にアリス。何でよりによってアリス。メルヘンチックだった母親の影響か。 そんなことをつらつらと悩んでいれば、漸く塞いでいた手を外して猫が潤んだ瞳で見上げてきた。泣きそうだ。 「アリスの意地悪〜……」 「褒めるなよ」 「褒めてないー!!」 「まぁそんなわけで」 「どういうワケ?!」 「祝ってやるから何か欲しいものでも言ってみろ」 「…………………………………………え」 さらりと流した俺に向かいぎゃーぎゃーと叫んでいた猫の動きがぴたりと止まった。 瞳をまん丸にして瞬かす猫は酷く驚いた様子でこちらをまじまじと見つめてきた。何だよ、その目は。 「……………………いわって…………え、え?」 「いらないなら別にいいけど」 「い、いります!! いる!!」 前言撤回しようとした俺をがばりと見上げて猫はしなやかな動きで、俺の足を挟むようにベッドに手をついた。 まるで閉じ込められるような体勢だなぁと考えつつも何か悩んでいるらしい猫の様子に暫く黙る。 眉を寄せて時折こちらをちらちらと見るその視線にだんだんイライラしてくると、不意に真剣な顔をして猫は言った。 「……………………………………アリス」 「へ?」 「アリス…………ううん、新一が、欲しい」 ………………………………。 …………………………………………。 …………………………………………………………。 ………………………………………………………………………………そうきたか。 言われた言葉に黙っていると頭から生えている耳が少しずつヘタレていく。 馬鹿なこと言ったと思ってるんだろうなー、だったら言わなきゃいいのによーなんて思いながら少し微笑んで見ればびくっと肩を竦める。 その仕草に苦笑してからそっと………………頬に、口付けた。 「………………ア……リ、ス?」 「……………………欲しいんだろ?」 「え……で、も……」 「んだよ、いらねぇならやんねぇぞ?」 「や、やだいる!!」 不満そうにそう言ってやれば慌てたようにぎゅーぎゅーと抱きしめてくる。 たまに沸いた幸せに頭が追いついていないらしい。だけれどしっかりとこちらを抱き込んでいる辺り抜け目はない。 そんな猫にくすくすと笑いながら自分からベッドに倒れこんでみた。 まだ少し躊躇っているのに笑って、首に腕を回す。 そっと耳元に近づいて。 「……………………こーいう時はアリスじゃねぇだろ、かいと?」 「……………………うん。愛してる、新一…………」 驚いたような表情をしてから、くすりと笑んで猫はそっと顔を近づけてくる。 そのあとはいつものように、真綿のような快楽に閉じ込められて。 日付が変わるまで、好きにさせていた。 次の日はなかなか起きれなくて結局学校を休んでしまったけれど、まぁこんな日もたまにはいいかと懐く猫を撫でながら思った。 |